裾野市の「財政非常事態宣言」

井出さとる

  • 令和3年2月15日、裾野市は「財政非常事態宣言」を出しました。
  • むしろ宣言せざるを得ない状況まで追い込まれた、ということかもしれません。
  • 財政非常事態宣言を出さなければならない状況に至ったことについて、これまで財政課題を提起し続けてきた議員として、わたしの考えをお伝えします。

※表現の判りやすさを重視し、「財政調整基金→貯金」とするなど、専門的な用語は表現を簡素化して記載します。

これまでの取り組み

  • 議員になって6年。議員になる前はハイブリッド車の開発をする部署の工長でした。
  • 現場で学んだ「現地・現物・現実」による問題解決や、部下やメンバーとのコミュニケーションを通じて、チームとしてのミッションを貫徹させること等々、場所は違えど工長だった私が議員として出来ることはきっとある、と強く思っていました。特に「データの見える化」は、問題・課題を議論する上での共通言語だと確信していました。
  • 議員になって初めて自治体の「決算カード」があることを知りました。現状把握の基本は時系列でデータを見ること。すると裾野市の財政には近隣市町には無い特性があることが見えてきました。それは「実質単年度収支」です。
  • 裾野市の実質単年度収支の異常性について、データを見える化し一般質問で繰り返し、繰り返し指摘し続けてきましたが、裾野市が「財政非常事態宣言」を宣言せざるを得ない状況まで追い込まれたことは、痛恨の極みであり、忸怩(じくじ)たる思いです。
MEMO

財政について指摘し議論した一般質問を数えてみました。

2015年:6月、12月

2016年:3月、6月、12月

2017年:6月、9月、12月

2018年:3月、6月、9月、12月

2019年:3月、9月、12月

2020年:3月、9月、12月

計18回(財政視点で取り組んだ学校統廃合は除いてあります)

貯金の取り崩しに頼った財政運営は、2010年から12年間続いている


参考
財政非常事態宣言裾野市公式ウェブサイト

裾野市でよく「お金が無い」ということは耳にした事があったけど、財政非常事態宣言が出されるほど悪いなんて知らなかった…ショックです…。

記事を見た人

井出さとる

2015年(平成27年)には、裾野市の実質単年度収支の異常性を捕捉していたにも関わらず、改善に向かわせることが出来ず、議員としての能力不足を悔いるばかりです…。5年早く実質単年度収支を改善に向かわせることが出来たらと思うと後悔ばかりです…
MEMO

実質単年度収支とは

1年間の収支バランスを示したもので、貯金を切り崩したり、貯金を積み立てたり、借金をしたり、借金を早めに返したり、といったやりくりの積み上げを示します。

計算式は、単年度収支+積立金+繰上償還金-積立金取崩し額です。

積立や繰上返済は黒字要素となり、貯金の取崩しは赤字要素となります。実質単年度収支が赤字の場合は、何らかの貯金が取り崩されています。

裾野市の宣言には、裾野市内の企業移転や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による大幅な税収減で、財政緊急事態宣言をする必要になった…ってことだけど…。

記事を見た人

井出さとる

それは少し違うんじゃ無いかと考えています。
どういうこと?。

記事を見た人

井出さとる

裾野市内の企業移転が公表されたのは、2018年7月20日。裾野市が行財政構造改革の取り組み方針を示したのが、2018年11月26日です。

裾野市の実質単年度収支の赤字は2010年から続いているので、2018年に裾野市内の企業移転が公表された時点で、9年連続で実質単年度収支が赤字の状況でした。


参考
「東富士工場の今後について」 決定事項のお知らせトヨタ自動車東日本株式会社


参考
行財政構造改革の取り組み裾野市公式ウェブサイト

「財政非常事態」と「財政破綻」とは違う

このままじゃ、夕張市の様に財政破綻をしてしまうの?

記事を見た人

井出さとる

現在の状態では、それは無いと思います。裾野市は財政力指数が1.0近辺で、静岡県内でも3本の指に入る位ですので、標準的な行政活動に必要なお金は「ほぼほぼ」自力で調達できる力を持っています。ですので裾野市の財政非常事態は、財政破綻とは違うと思います。
MEMO

財政力指数とは

そのまちの財政力の強弱を表すもので、毎年の行政活動に必要なお金を、ど
のくらい自力で調達できるかを示したものです。指数高いほど、毎年必要なお金を自力で調達でき、1.0以上は支出より調達が多いということになります。

じゃあ、なぜ裾野市は財政非常事態を宣言しなければならなかったの?

記事を見た人

井出さとる

多分、貯金を切り崩して維持してきた市民サービスの提供が、これ以上できなくなるということを「財政非常事態」という形で、市民に公表したということだと思います。

身の丈にあった支出にするための道のり

これから裾野市はどうなってしまうの?

記事を見た人

井出さとる

例えるなら、リーマンショック前の裾野市は

  • 超一等地に建つ高級マンションで、
  • 高価なアンティークや絵画が飾られ、
  • ジャグジーと露天風呂と、プールがあって、
  • バルコニーは大きな庭付きで、
  • 子ども部屋が沢山あって、
  • 書庫やキッチンも複数ある。

そんな「贅沢」な暮らしができる状況だったのだと思います。もしかしたら実感とは違うかもしれませんが…

井出さとる

それが、リーマンショック以降は企業の決算状況や国の税制改正などもあり、収入の状況が一変しました。

しかし、収入の状況が一変したにも関わらず「贅沢」な暮らしを根本から変えることが12年間できなかった。

それで、立ち行かなくなって財政非常事態宣言をしなければならない状況に陥ってしまったと…。

記事を見た人

井出さとる

そういうことだと思います。
じゃあ、裾野市の財政非常事態を解消するためには「贅沢」な状態を変えていかなければならないということですね…。

記事を見た人

井出さとる

そうです!それが「身の丈にあった」ということになります。「身の丈にあった」状態の具体像を示すのは、財政非常事態宣言を出した裾野市の責任ですので、今後の裾野市の情報発信を注視していただければと思います。
井出さん的にはどう考えているの?

記事を見た人

井出さとる

裾野市の財政力指数は1.0に限りなく近いので、調達能力は県内自治体でも3本の指に入る高い自治体です。しかし、

  • 年間の赤字が7億円規模で推移している
  • 教育、福祉関係政策のコストが年々高まっている
  • 公共施設の老朽化改修が目白押し
  • 年間の借金返済額が年々高まっている
  • 今後の経済変動や災害などのリスクに備えて貯金をし直す

などを考慮すると、井出個人の分析では10億円以上の規模で経常的支出の削減をする必要があるのではと見込んでいます。

10億円以上の規模!!すごい金額ですね…

記事を見た人

井出さとる

ですので、公共施設の廃止や、行政サービスの縮小は避けて通れないので、市民の方々へ正しく、丁寧な説明をすること必要だ、ということです。それが財政非常事態宣言を出した裾野市の責任だと思います。

総論賛成、各論反対を乗り越えるために

井出さん、そうは言うけど公共施設の廃止や行政サービスの見直しなんて、そう簡単にいかないんじゃないの?

記事を見た人

井出さとる

すっごい難しいと思います。全ての公共施設や行政サービスには、受益者となる市民がいらっしゃるので、利用者からすると廃止や見直しは「直接的なサービスの低下」になります。それを理解・納得して頂くためには、財政非常事態に陥った裾野市の生々しい現状を把握して頂くことが欠かせません。
そうは言うけど、このままでは令和4年度の予算が組めないっていう報道もあるじゃないですか…間に合うんですか?

記事を見た人

井出さとる

裾野市は、令和4年度の予算編成に向けて、全ての事業をもう一度精査する、としています。今後の裾野市の情報発信を注視していただければと思います。

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